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キャラが激しく崩壊しております。
許せない!という方はこの先にお進みにならないようお願いいたします。
ドンと恋!なお方は下へスクロールしてください




























◆生いゆく先は




甘い香りが鼻腔をくすぐる。
いつもとは違うその香りに、確かめるように深呼吸した。
とたん、ふわり、と体が浮き上がって意識が浮上していく。

物忌みの休みを、自室で転寝しつつ過ごしていた昌浩は唐突に目を覚ますと、パチパチと瞬いた。
そしてがばりと起き上がり、不思議そうな顔をした。
目覚めたはずのその目は、まだどこか焦点が合わないようだ。


「…あれ?」


また思い出したかのようにそう言うと、昌浩はきょろきょろとあたりを見回した。
何度も何度も見回して、やがて、ふにゃ、と少し悲しげに眉を寄せる。
そしておもむろに立ち上がると


「彰子お〜?」

と間延びした声を出しながら、とたとたと廊下を歩き始めた。

「ん…?なんだあ?」

日向で昼寝をしていた物の怪は、寝ぼけ眼を瞬かせて廊下を歩く昌浩の背を見た。
先程までうつらうつらと眠っていた昌浩が、いつの間にか廊下の端を曲がるところだった。


「彰子〜?あれえ?」

まだ、昌浩はぽやん、とまるで寝ているかのような声で藤の花を探し回ってぽてぽてと廊下を行き来している。
右へ行ってはくるりと向きを変え。
左へ行っては戻ってくる。
そんな事を何度も繰り返し、まるで夢を見ているような表情であたりを見回しているのだ。

おかしな気配に、何ごとだと言うように玄武と太陰も昌浩の傍らに現れて目を丸くした。
屋敷内で、声を上げて誰かを呼ばうなど、昌浩にしては珍しい事だったのだ。
明らかに行動がおかしい。
しかも、探す相手は彰子である。
大声で探し回ったりして、邸の外に声が漏れたらどうする気なのだろうか。



「ま、昌浩…」

ととと、と控えめながらいつもよりも更に早足でやってきた人影が昌浩を呼び止めた。
その声には焦燥が入り混じっている。

「あ、彰子」

昌浩は、その人影を認めるとふにゃりと笑い、嬉しそうに両手を広げた。
まるで飛び込んで来いといわんばかりの行動に、彰子は驚いて足を止める。


「いたいた、どこ行ってたんだよう〜」
「ど、どこって、あの、厨で夕餉の支度を…」
「だめじゃないか、俺の側をはなれたりしたら。寂しいじゃないか」


ふふふ、ととろけるように笑いながら言い募る昌浩の言葉に、彰子は頬を傍目にもはっきりと赤くした。
だがそんな彰子とは対照的に、昌浩は実に嬉しそうに
にこにこと笑いながら、広げていた腕ですっぽりと頭ひとつ小さな少女を抱えこんだ。


「…っ」
「今日は、たくさん陰陽道の話をしてあげるって言っただろう〜。勝手にどっか行っちゃだめじゃないかあ」
「ま、まさ…っ…!?」
「もう捕まえたから、今日は俺の側にいるんだよう〜?いいかい?ああ、それにしても彰子はいいにおいだなあ〜」


へらへらとした言葉でそういうと、昌浩は更に真っ赤になって目を見開いている彰子を覗き込んだ。
彰子は恥ずかしさに、目まで潤み始めている。
大好きな昌浩だが、一体この変化はどうした事だろうか。
戸惑いばかりで、彰子はただ硬直してしまった。
更に追い討ちをかけるように、昌浩は今度は妖艶な笑みを向けてしっかりと彰子を抱きしめなおし、その肩口に顔を埋めた。

そんな光景に、白い物の怪はじめ玄武も太陰も顎がぱっかりと外れた。
ある種の衝撃が、冬の穏やかな安倍邸を走りぬけている。

固まったままの彰子をにこにこと促して、昌浩はやっと自室へと戻り始めた。
驚きの衝撃にあごを外していた物の怪だったが、ふと昌浩の部屋に馨る匂いに鼻をひくつかせるとはっと目を見開いた。

そしてそのまま庭にピョンと飛び降りると最短ルートで晴明の部屋に飛び込んだのだ。

*********


「晴明いいい〜!お前、お前っ!」
「おお〜、紅連か。」

そういいつつニコニコと笑う好々爺は、目の前にある香に呪をかけ終ったところだった。

「おま、な、昌浩に何かしただろう!?」
「ああ〜。ちょちょっとな。ほれ、この香、龍涎香にしかけてやったのよ」

さらりと言ってのける晴明に、物の怪はなにいいい!と目が飛び出るほどに瞠目しつつ叫んだ。
龍涎香、と言えば媚薬にもなる香ではないか。


「おまえ!そ、その香に…っ!?」
「何、この香の力を強めてやっただけでな。と、よし。コレを今度は彰子様に…」


そういいつつ、晴明は胸元から白い紙を取り出し、香をいそいそと載せている。
傍らで驚きと混乱に目をむいている物の怪にも何のお構いも無しである。
そしてその香の香りに、今度こそ物の怪はどかん!と激しい音を立てて床にめり込んでしまった。


「なにやっとるんじゃ」
「・・・っ、お、お、お、ああう、あぺは、s@っ!!!」
「その香りは麝香だな、晴明」
「じゃこう!?」


衝撃にもはや言葉も出ない物の怪に代わり、顕現した朱雀が何事もないようにしれっと言ってのけた。
騒ぎに駆けつけた玄武は、その香の名に瞠目している。
麝香は、女性にとりわけ効果のあるフェロモン系の媚薬なのだ。
それを彰子につかうと言うのだ、この好々爺は。


「そうじゃ、そうじゃ。よう知っとるのう〜」

晴明はほけほけと笑いつつ、手にした式をふわりと空へ放った。
白い小鳥と成った式は、晴明の部屋からまっすぐ昌浩の部屋へと飛んでいく。
その様子に、はっと我に返った物の怪はふたたび、くわりと主に向かった。


「な!何考えとるんだ!」

物の怪が叫ぶと、晴明は目をきらりとすがめ視線を返す。
そして扇で口元をかくしつつ、紅連、と低い声で物の怪を手招きした。
先程とは違った重い空気に、ぴり、と一気に緊張をまとわせて
物の怪はそろりと老人のもとへと近寄る。

思いつめたような晴明の表情に、物の怪は息を呑んだ。

そして招かれるまま近寄り、主の口元へ長い耳を寄せた。



「わしゃあ、早ようひ孫が見たいんじゃよ」



再び晴明の部屋の床は激しい衝突音に包まれた。


だが、香、というものは時間がたてば薄れるもの、だったりする。
四半刻もしないうちに晴明の孫は赤くなったり青くなったりしているのだった。





************



晴明様は孫が可愛くて、ちょっかいだしたくて仕方ないのです(笑)
当時高価なこれらのお香は、きっと道長様からもらったと。
龍涎香(りゅうぜんこう)もじゃこう(いわゆるムスク)も実際にあるお香ですが
かなり高価なようです。

それにしてもオチてなくてごめんなさい;
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